昔から「塩加減が味の決め手」と言われるほど、塩は料理に欠かせない大切な調味料です。
味付けだけでなく、下準備、調理の過程でも様々な使われ方をします。
私が小さかった頃は、規制の影響で限られた種類しかなかった塩ですが、今はスーパーや百貨店に行くと、さまざまな国、種類の塩を見かけるようになりました。日本でも土地のお塩をお土産にしているところも多く、旅行で買われるという方も多いのではないでしょうか。
今回はそんな身近な塩の種類、使い方、味の違いなどのお話しです。
目次
・塩ってどんな種類があるの?
・塩の味は何の味?
・塩の効用いろいろ
・ちょっと懐かしい精製塩のお話
・塩と健康のお話
|塩ってどんな種類があるの?
塩を買いに行くと、棚に所狭しと商品が並んでいて、お値段も高いものから安価なものまであります。
名前も様々で、正直何がどう違うの?と思われる方も多いと思います。
まずは商品の表示としての分類を整理したいと思います。
日本は主に海水から塩を作っていますが、世界では岩塩、湖塩が主流で、海水を利用している国は世界の4分の1程度と言われています。
海塩 | 海水を原料として製造された塩すべてを指します。 |
岩塩 | 岩塩鉱から採掘した塩を指します。岩塩を一旦溶かして再結晶させたものも岩塩と表示されます。 |
湖塩 | 塩湖(ウユニ塩湖、死海など)から採れた塩を指します。 |
天日塩 | 天日で蒸発させて製造した海塩を指します。 |
焼き塩 | 結晶化した塩を高温になるまで加熱することによって、味にまろやかさを出したり、サラサラと固まりにくくしています。 |
藻塩 | 海藻成分を含んだ塩を指します。 |
フレーク塩 | 海水の表面で成長した結晶が割れてできたもので、溶けやすいお塩です。 フランスのゲランドやカマルグ、イルドレ。イギリスのマルドンの塩が有名です。 |
☆天然、自然という表記について
商品表記としての「天然」「自然」は、自然という内容がはっきりしておらず、場合によっては、根拠がないのに、健康に良いといった優良誤認を与えかねない表示のため使用できないことになっています。
現在うちで使っているお塩はこちらの3種類。
(塩についてはみなさんいろいろな考え方があって、これがいいという事ではないので、あくまで参考までにのご紹介です。)
写真左:岩塩
パスタ、野菜をゆでる時、煮込みはじめの下味などに使います。安価。
写真中央:粟国の塩(海塩)
粒が粗く、しっとりとしている。苦みが程よくあり、複雑な味わい。
仕上げの味の調整や、食べるときに少量つけていただきます。
写真右:伯方の塩 焼塩(海塩)
粗い粒を焼いて水分を飛ばし、細かい粒子にしたもの。塩味がはっきりしている。
サラサラしているので材料に均一にふりやすい。溶けやすいので、食材に下味をつけるときに使います。
個人的には、調味料はいろいろな種類をそろえるよりも、これと決めた調味料を使い続けるほうが、味にブレがでにくくおすすめです。
|塩の味は何の味?
塩は調味料の中で唯一原料を必要としない調味料。その主成分は塩化ナトリウム。
化学の授業で「NaCl」と習った、ナトリウムと塩素が結合してできた物質です。
そこにカルシウム(甘味)、カリウム(酸味)、マグネシウム(苦味)といったミネラル成分が加わり、塩の複雑な味わいを生み出しています。
粟国の塩、伯方の塩の成分表示を見てみると、数値に違いがあるのがわかります。
そのため同じ量を使用しても仕上がりの塩味、旨味が異なってきます。
☆成分表示項目が製品によって違う理由について
製品に表示されている項目は、まず熱量、タンパク質、脂質、炭水化物、食塩相当量の順で書かれ、その次に人体に必要な栄養成分として指定された成分(Ca,Mg,K,Fe,Cu,Zn,,Cr,Se,Mn,I,P)のうち表示したい成分を書き、次にそれ以外で表示したい成分が区分して記載されているため、製品によって表示項目が異なります。
☆ナトリウムと塩分量の計算
ナトリウムの原子量は22.98977、塩化ナトリウムの原子量は58.443で、塩化ナトリウムはナトリウムの2.54倍の原子量になります。製品の成分表示にナトリウムの表示しかない場合は、2.54をかけて塩分量(塩化ナトリウム)を計算する必要があります。
レシピを参考に料理をしたときに、どうも味が思った通りにならないということがあったら、それは使っている塩の違いが関係しているかもしれません。
また、塩味の感じ方は塩の粒子の大きさの影響もあります。
粒子が大きいほうがゆっくりと溶けていくので、食べたときにやさしい塩味と旨味を感じます。
ですので、食べるときに少量足すのであれば粒子の大きい塩(うちのラインナップでいうと粟国の塩)がおすすめです。
|塩の効用いろいろ
塩は味付け以外にも様々な使い方があります。
使い方一つで料理の味が変わる塩の効果、ぜひお料理に活用してみてください。
1、料理の味を高める
あんこやスイカに塩をかけるとより甘味を感じる、出汁に塩を入れると旨味をより感じる、といったように味の輪郭をはっきりさせる効果があります。
2、酸味を抑える
ドレッシングやすし酢、酢の物に少し塩を加えて酸味を和らげることができます。
3、弾力を出す
魚のすり身やひき肉を練るときに塩を加えて、粘りを出し弾力のある仕上がりにしたり、パンを作る時に加えてグルテンの形成を促したり、うどんにコシを生むために加えます。
4、たんぱく質を固める
加熱により固まるタンパク質の作用を促進する効果があります。魚や肉を焼くときに塩をすると表面が素早く焼き固まり、旨味を閉じ込めることができます。卵を茹でるときに加えると、白身の流出を抑えることができます。
5、水分を出す
塩を振ると、浸透圧の働きで食材から水分が出ます。漬物の場合は、余分な水分が抜けぱりっとした食感になります。魚の下ごしらえに使うと、臭みを含む水分が抜けて身が締まるので、煮崩れや身割れ防止にもなります。また、塩蔵品を塩水(1%程度)につけて塩を抜くためにも使われます。
6、変色を防ぐ
塩には食材の酸化を防ぐ効果があり、野菜を色よくゆで上げたり、りんごの褐変を抑える際に使います。
7、汚れを取る
あさりなどの殻を洗う、オクラの産毛を取る、きゅうりの表面をなめらかにするときなどに使います。魚介を洗う、解凍する時に海水程度の塩水(3%程度)を使うと、旨味が抜けず余分な水分を吸ってしまうこともありません。
8、砂抜き
海水程度の塩水(3%程度)につけて貝類の砂を抜きます。
9、保存性を高める
梅干し、干物などに塩を加えることで、余分な水分が抜けて保存性が高まります。
|ちょっと懐かしい精製塩のお話
現在1000種類ほどの塩が流通していると言われていますが、ほんの数十年前は状況が違いました。
1971年(昭和46年)の塩業近代化臨時措置法の施行で、塩の輸入が制限され、イオン交換膜方式で作られた塩化ナトリウムだけを抽出した精製塩が流通するようになり、塩といえば塩化ナトリウムの味、というイメージがこの時代に浸透しました。
ちょうど私が子供の頃で、そういったお塩が家にあったのをよく覚えています。
のちに国の自由化政策の一環として、1997年(平成9年)に塩専売法が廃止され、塩事業法が制定。塩の輸入が再開され、昔ながらの塩田方式が復活して現在に至ります。
|塩と健康のお話
お塩は、私たちの体の機能を調節するのに欠かせないものでもありますが、摂りすぎると高血圧などの生活習慣病のリスクが高まる可能性があります。
現在下記のように摂取量の目標値が設定されていますが、実際は10g前後と目標値よりもかなり多く摂取していることがわかっています。また、世界保健機関(WHO)の目標値5gと比べても多いと言えます。
成人1人あたりの食塩摂取量の目標値(2020年度)
男性:7.5g未満
女性:6.5g未満
出典:厚生労働省資料 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000760248.pdf(2023.9)
料理で使う以外にも、製品にすでに添加されている場合もあり、現代の食生活でこの目標値を達成するのはなかなか難しいのが現状ですが、カリウムなどのナトリウムの排出を促す食材とうまく組み合わせて料理を作るなどして、適正量を意識しながら上手に料理に活用していきたいですね。
今回は塩の使い方についてのお話でした。
日々のお料理のご参考になりましたらうれしいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
参考文献:食用塩公正取引協議会HP https://www.salt-fair.jp/