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Pâte sucrée(パートシュクレ)とPâte brisée(パートブリゼ)について

8月、9月のフレンチ基礎レッスンでは、砂糖の入った甘いタルト生地『Pâte sucrée(パートシュクレ)』を使った、工程の異なる2種類のお菓子をご紹介しました。

レッスンの中で生徒様から「Pâte sucrée(パートシュクレ)とPâte brisée(パートブリゼ)の違い」についてご質問をいただいたので、こちらでまとめてみたいと思います。

8月のレッスンでは生地を空焼きしてレモンクリームを詰めるレモンタルト(左)。9月のレッスンでは、アーモンドクリームを詰めて生地と一緒に焼き上げるあんずのタルト(右)をご紹介しました。

|Pâte sucrée(パートシュクレ)とPâte brisée(パートブリゼ)について

Pâte sucrée(パートシュクレ)』はその名の通り砂糖(sucre)の入った甘い生地。
主に薄力粉、粉砂糖、バター、卵を使い、バターの可塑(かそ)性※1とショートニング性※2を活かしたサクッとした軽い口当たりが特徴。
作り方は、柔らかくしたバターに粉砂糖をなじませ、卵を加えてクリーム状にし(crémer(クレメ))、卵の水分を粉砂糖に吸わせます。次に薄力粉を加えることで粉と水分がなじみにくくなり、グルテンの形成が抑えられます。その分生地がつながりにくいので、『fraiser(フレゼ)』という手のひらで生地をすりつける作業をして全体を均一な状態に仕上げます。
カスタードクリーム、レモンクリーム、アーモンドクリームなどと合わせてバリエーション豊かなタルトを作ることができます。

一方『Pâte brisée(パートブリゼ)』は『Pâte foncer(パータフォンセ)』とも呼ばれる、甘みがなく料理にもお菓子にも使う生地。
主に薄力粉、バター、水・卵黄を使い、バターのショートニング性を活かしてグルテンの形成を抑えたサクサクとした食感が特徴。briseeは「壊れた、砕けた」という意味があります。
作り方は、両手で冷たいバターと薄力粉をこすり合わせる『sablage(サブラージュ)』という作業をしてバターを薄力粉の中に細かくなじませ、後から加える水分と薄力粉がつながりにくくすることで、グルテンの形成を押さえてサクッとした食感に仕上げます。
アーモンドクリームと合わせたお菓子や塩気のある具を詰めるキッシュなどに使われます。
ちなみに『Pâta à foncer(パータフォンセ)』は、タルトなど型に敷いて使う生地の総称として使われることもあります。

料理を勉強し始める前は、パイを作るには折り込みパイ生地(pâte feuilletée(パートフュイテ))ができないとだめだと思っていたので、パートブリゼを知ったときにはこんなに簡単でサックサクの食感になる生地があるなんて最高!と感激でした。

Pâte sablé(パートサブレ)とは

料理で主に使うのはパートブリゼ、パートシュクレですが、砂糖が入る生地にはもう一つ『Pâte sablé(パートサブレ)』があります。
パートサブレは、パートブリゼやパートシュクレよりももろい練り込みパイ生地で、パートシュクレに比べると、粉砂糖、バター、卵の配合が多いのが特徴。
作り方は、パートブリゼのように薄力粉とバターをサブラージュする場合と、パートシュクレのように薄力粉以外の材料をクリーム状にして作る場合があります。
sablé(サブレ)と呼ばれるのは、sablageして作るから、または砂(sable(サーブル))のようにもろ崩れやすいからともいわれています。
さくっとした口当たりの小さな焼き菓子のこともsabléと呼び、パートサブレはそもそもサブレ用の生地を指しますが、練り込みパイ生地の名前としても広く使われています。



パートブリゼは、1月のフレンチ基礎レッスンのキッシュでご紹介しています。

キッシュロレーヌ&当日のお楽しみキッシュ

今回は料理やお菓子に使う代表的な生地、
Pâte sucrée(パートシュクレ)』と『Pâte brisée(パートブリゼ)のお話でした。
日々のお料理の参考になりましたらうれしいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

※1可塑性:固形の状態で外から力を加えると、自由に形を変えることができる性質。
※2ショートニング性:可塑性のある固形油脂が、小麦粉の中に薄膜状に広がってグルテンをバラバラに分解する性質。サクサクとした食感を与える。
参考:プロのためのわかりやすいフランス菓子 辻製菓専門学校監修 川北末一(柴田書店)

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