プロヴァンスは、東はイタリアと国境を接し、西はローヌ川で区切られ、アルプスの南西端を背景に南の地中海に張り出しています。
地中海に面する海岸線は複雑に入り組んでいて、「calanque(カランク)」と呼ばれるプロヴァンス地方の地中海沿岸に見られる切り立った岩に囲まれた入江は、景勝地として知られ人気の観光スポットとなっています。
ローヌ渓谷から地中海に向かって「mistral(ミストラル)」と呼ばれる冷たく乾燥した強風が吹くため、風よけの防風林が畑の周辺などにみられます。
カランク(calanque)
マルセイユの南東からイタリア国境までの海岸一帯は、「Cote d’Azur(コート・ダジュール)=紺碧の海岸」と呼ばれ、避暑や避寒地として人気。夏になるとニースやカンヌには世界中から観光客が訪れます。
ニースの街並み
ニースを象徴する「Le Negresco(ホテルネグレスコ)」
マルセイユは紀元前 6 世紀頃にギリシア人が築いた街で、移民が集まり交易が盛んに行われて栄えてきました。ギリシア、ローマ文明の影響をうけたことで、成熟した文化を持ち、今でも残る古代ローマ時代の遺跡はこの地方の歴史の深さを物語っています。
アルルの円形闘技場
プロヴァンスという呼び名は、古代ローマの属州プロヴィンキア(ローマの言葉で地方を意味する)に由来しています。歴史的にローマ、ギリシア、トルコに統治されていたことから、料理にもその名残が色濃く残っています。
【特産物】
ブドウ栽培はフランス最古の歴史を誇り、ロゼワインの生産量が多いことで知られています。夏になるとレストランでは、ロゼワインに氷を入れて飲む風景をよく見かけます。
豊富に採れるオリーブから作られるオリーブオイルは、料理だけでなく菓子にも使われ、特にNyons(ニヨンス)産のオリーブオイルとブラックオリーブはA.O.C※の認証を受けています。
西端の湿地帯Camargueカマルグでは稲作が行われており、同地域の雄牛もA.O.Cの認証を受けています。またカマルグは、ペイ・ド・ラ・ロワール地方のGuérande(ゲランド)、ヌーヴェル=アキテーヌ地方にある港湾都市ラ・ロシェルの西方に浮かぶÎle de Ré(イル・ド・レ)と並ぶ塩の産地としても有名です。
アーティチョークやズッキーニ、なす、ピーマンなどの野菜や香草も豊富に採れ、地中海で獲れる豊富な海の幸とともに南仏料理にふんだんに使われています。
※AOC(Appellation d’Origine Contrôlée:原産地呼称制度)
ワイン、チーズ等の優れた品質をもつ農産物やその加工品の品質を保証する農産物認証制度。認証があることによって消費者の安心を確保し、また、伝統的な製法や農産物の品質が守られています。
【代表的な料理】
・Bouillabaisse(ブイヤベース)
もとは売りに出せない魚で作る漁師料理。出来上がったブイヤベースは、まずはスープを味わい、次に魚介を食べる。薬味のアイヨリやガーリックトーストともに海の幸を堪能できる料理。
プロヴァンス語のbouiabaisso(煮え、煮詰まる)に由来。
・Ratatouille(ラタトゥイユ)
トマト、なす、ズッキーニなどの夏野菜をふんだんに使った煮込み料理。
・Salade niçoise(ニース風サラダ)
ニースの伝統的なサラダ。本来のニース風サラダはすべて生の野菜を用い、ソースに酢は使わず、トマトは4つ切りにするなどいくつかの条件があるともいわれている。
・Aioli(アイヨリ)
プロヴァンス語でにんにくを指す「ail」、油を指す「oil」からなる言葉。今では卵黄、オリーブオイルを使ったにんにく入りのマヨネーズのような作り方が普通ですが、昔はにんにくの香りを生かすために卵黄入れず、乳鉢ににんにくを入れて乳棒(ピロン)でつきつぶして作っていた。
プロヴァンス語のaïoliに由来。
・Rouille(ルイユ)
出来上がりの色からプロバンス語で赤錆を指す「rouio」が語源になっている。もともとは赤唐辛子をにんにくと固くなったパンの中身とともにすりつぶし、オリーブオイルを加えて混ぜ、魚のスープで溶きのばすが、今ではパンの代わりに卵黄やじゃがいもを使うなど様々な作り方がある。
・Pistou(ピストゥ)
バジルとにんにくで作る、南仏プロヴァンス地方の薬味。スープに加えたり、魚や肉のソースに使ったりもできます。
・Tapenade(タプナード)
ブラックオリーブをベースにして作る薬味。トーストしたパンに塗ったり、魚や肉料理に添えたり、生野菜に添えたりします。
プロヴァンス語のケイパーを意味するtapenoに由来。
【主要都市】
産業の中心はマルセイユ。フランス第二の都市。
【気候】
大陸性気候で寒暖の差が激しく、冬は非常に寒い。東部は降水量が少ない。
今回は料理から見るフランスの地方のお話でした。
日々のお料理の参考になりましたらうれしいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
参考:基礎から学ぶフランス地方料理 ル・コルドン・ブルー(株式会社柴田書店)