お料理やお菓子に豊かな香りを与えてくれるバター。火にかけている間に、気が付いたら黒いつぶつぶができて、焦げたようなにおいがついてしまった、ということはありませんか?
こういった失敗がなくバターを使えるよう、ひと手間加えたものが今回ご紹介する『澄ましバター』です。フランス語では「Beurre clarifié(ブール クラリフィエ)」と呼ばれています。
茹でたアスパラガスやエッグベネディクトに添える「sauce hollandaise(ソースオランデーズ)」の材料として名前を聞いたことがある方も多いのでは。
イタリア料理では、ミラノ風カツレツを作るときに使われ、揚げ焼している間にバターが焦げないので、カツレツの表面がきれいに仕上がります。
今回は、とっても便利でお料理の味わいを底上げしてくれる、澄ましバターについてご紹介したいと思います。
目次
・バターはなぜ焦げるのか
・澄ましバターの作り方
・澄ましバターだけを取り出す方法
・バターの保存方法
|バターはなぜ焦げるのか
作り方をご紹介する前に、なぜバターが焦げるかについてお話したいと思います。
バターは主に、油、水分、たんぱく質で構成されています。
加熱してバターが溶けると、まずバターの水分と油が反応して、パチパチというはぜるような音がしてきます。少し水分の残っているフライパンに、油を入れて温めたときにそういった状態になりますね。
水分が蒸発してなくなると、パチパチという音がおさまり、油の温度が上がってきてたんぱく質が茶色くなってきます。揚げ物をするときに衣が色づくのと同じです。
バター特有の香ばしい香りはここから生まれます。
特に『beurre noisette(ブールノワゼット)』と呼ばれる、たんぱく質の部分がヘーゼルナッツ(はしばみ)のような色になったバターは、香ばしい香りでフィナンシェを作るときには欠かせません。
こちらがヘーゼルナッツの実
さらに加熱するとたんぱく質は黒くなり、バターに焦げの香りと苦味がついてしまい、こうなるとお料理にもお菓子にも使うことはできなくなります。
ですので、バターを焦がさないためには、たんぱく質を焦がさない温度を保つか、たんぱく質の部分を取り除いておけばいいわけです。
そしてこのたんぱく質の部分を取り除いたものが、今回ご紹介する『澄ましバター』です。
|澄ましバターの作り方
バターを溶かします(今回は50gのバターを使っています)。
※レンジで溶かす場合は600Wで1分~1分20秒ほど加熱してください(量によって時間は変わります)。また、加熱しすぎると庫内でバターが飛び散ることがありますので、溶け具合を見ながら少しづつ加熱するようにしましょう。
【湯煎で溶かす場合】
溶けやすいように切り分けたバターをボウルに入れ、湯煎(40℃くらい)にあててバターを溶かします。
バターが完全に溶けたら粗熱が取れるまで置いておきます。
【フライパンで溶かす場合】
溶けやすいように切り分けたバターをフライパンに入れ、弱火にかけます。
すべて溶けたらボウルに取り出します。
表面に泡が浮いていたら取り除き、粗熱が取れるまで置いておきます。
これが『溶かしバター』です。
『澄ましバター』にするために、このまま粗熱が取れるまでしばらく置いておきます。
しばらくすると、上の写真のように油(透明な上澄みの部分)と、水分、たんぱく質(底の白い部分)に分かれます。
この上澄みの部分が『澄ましバター』です。
仕上がりに大きな差はありませんが、手軽さでいうと湯煎で溶かす方法がおすすめです。
|澄ましバターだけを取り出す方法
澄ましバターを使うときは、透明な上澄みの部分をすくって使うのが一般的ですが、今回は分けやすいよう、冷蔵庫で完全に固まるまで冷やしました。
ボウルの底の白い部分が、今回取り除きたい水分、たんぱく質になります。
固まった油の部分を取り出して、白い部分をへらや包丁でこそげ取り、水気をペーパーでふき取ります。
溶かしたら『澄ましバター』の出来上がり。
出来上がりの量は約40g(元の量の4/5程度)になりました。
|バターの保存方法
バターは光や空気に触れると酸化しやすく、また食材のにおいも付きやすいので注意が必要です。
ですので、
・ラップで隙間ができないよう包み、空気に触れないようにする
・アルミホイルで包み、光が当たらないようにする
・ジップロックなどに入れてにおい移りを防ぐ
といった点を意識して保存しましょう。
また、冷蔵庫、冷凍庫どちらでも保存できますが、冷凍庫の方が雑菌が繁殖しにくく、冷蔵庫と比べると長く保存することが可能です。
普段の使い方に合わせてカットして保存しておけば、切る手間や包み直す手間が省けて便利です。
今回は澄ましバターのお話でした。
日々のお料理のご参考になりましたらうれしいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!