
「塩加減が味の決め手」という言葉があるように、お塩はお料理に欠かせない大切な調味料です。
スーパーに行くと、岩塩、海塩、フレーク塩……と種類の豊富さに驚かれる方も多いのではないでしょうか。
「どれを選べばいいの?」と棚の前で迷ったことがある方もきっといらっしゃいますよね。
お塩は「ただしょっぱくするもの」ではありません。種類によって味わいが違い、使い方によって料理の仕上がりが大きく変わります。
今回は、お塩の種類と効用、そして上手な使い分けをわかりやすくご紹介します。
目次
|お塩にはどんな種類があるの?

日本では海水から作る海塩が一般的ですが、世界では岩塩や湖塩など、土地それぞれのお塩が作られています。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 海塩 | 海水を原料として製造された塩。日本で最も一般的。 |
| 岩塩 | 岩塩鉱から採掘した塩。一旦溶かして再結晶させたものも岩塩と表示されます。 |
| 湖塩 | ウユニ塩湖・死海などの塩湖から採れた塩。 |
| 天日塩 | 天日で蒸発させて製造した海塩。 |
| 焼塩 | 結晶化した塩を高温で加熱。まろやかな味でサラサラしやすい。 |
| 藻塩 | 海藻成分を含んだ塩。ほのかな磯の風味が特徴。 |
| フレーク塩 | 海水の表面で成長した結晶が割れてできたもの。溶けやすく、フランスのゲランド、イギリスのマルドンが有名。 |
「天然塩」「自然塩」という表記について
これらの表記は定義が曖昧で優良誤認を招く恐れがあるため、塩の商品名などに使用できないことになっています。「自然のエネルギーを利用して…」のように、塩を直接修飾しない表現は認められています。
|まず揃えたい3種類のお塩

「種類が多すぎて使いこなせない……」という方は、まず形状の違う3種類を揃えてみるのがおすすめです。教室でも実際にこの3種類を使い分けています。
調理・下味向き
岩塩
力強い塩気で素材の味をしっかり引き出す。粒が大きめ。
こんな場面で
パスタや野菜を茹でるとき、煮込み料理の下味に
仕上げ向き
粟国の塩
粒が粗くしっとりしたタイプ。程よい苦みと旨味。
こんな場面で
肉・魚・野菜を食べるときに仕上げとしてかける
下味・まぶし向き
伯方の塩 焼塩
細かい粒でサラサラ。均一に振りやすく馴染みが早い。
こんな場面で
肉や魚にまんべんなく下味をつけたいとき
|お塩の味は「ミネラルのハーモニー」

お塩の主成分は「塩化ナトリウム」ですが、そこに含まれるミネラルがお塩の個性を作っています。
ミネラルと味わいの関係
このバランスの違いが、同じ「小さじ1」でもお塩ごとにしょっぱさや旨味の感じ方が変わる理由のひとつです。
レシピ通りに作ってもどこか味がいまいち……ということがあったら、使っているお塩の種類がレシピと違うことが原因かもしれません。お塩を変えてみるだけで、仕上がりが変わることがありますよ。
|料理をおいしくするお塩の効用
お塩は味付け以外にも、調理の過程でさまざまな働きをします。知っているかどうかで、料理の仕上がりが格段に変わります。
効果①
料理の味を高める(対比効果)
少量の塩を加えることで、甘味や旨味がより鮮明に感じられます。あんこやスイカにひとつまみかけると甘さが引き立つのは、この「対比効果」によるものです。出汁にも少量加えることで旨味の輪郭がはっきりします。
活用例
スイカやあんこに少量かける。お吸い物・出汁の仕上げに。
効果②
酸味を抑える
塩には酸味を和らげる効果があります。ドレッシングやすし酢に少し加えると、酢の角が取れてまろやかな味わいになります。
活用例
ドレッシング・すし酢・酢の物に少量加える。
効果③
弾力を出す
塩がタンパク質に働きかけ、粘りや弾力を生みます。魚のすり身やひき肉を練るとき、うどんのコシを出すとき、パン生地のグルテン形成を促すときに欠かせません。
活用例
つくね・ハンバーグのたね、うどん生地、パン生地に加える。
効果④
たんぱく質を固める
加熱によるタンパク質の凝固を促進します。肉や魚を焼く前に振ると表面が素早く焼き固まり、旨味を閉じ込めることができます。卵を茹でるときに加えると白身の流出を防ぎます。
活用例
魚・肉を焼く前に振る。ゆで卵を作るときにお湯に加える。
効果⑤
水分を出す
浸透圧の作用で食材から水分を引き出します。漬物はぱりっとした食感に、魚の下ごしらえでは臭みを含む水分が抜けて身が締まり、煮崩れや身割れを防ぎます。塩蔵品の塩抜きには1%程度の塩水を使います。
活用例
きゅうりの浅漬け。魚の塩を当てる下ごしらえ。塩抜きには薄い塩水を使う。
効果⑥
変色を防ぐ
野菜のゆで水に加えることでクロロフィルが安定し、緑色が鮮やかに仕上がります。りんごなどの褐変(酸化による変色)も塩水に浸すことで抑えられます。
活用例
ほうれん草・ブロッコリーを茹でるときにひとつまみ。りんごを塩水にさらす。
効果⑦
汚れを取る・砂を抜く・保存性を高める
あさりの殻洗いやオクラの産毛取り、きゅうりの表面をなめらかにするときにも使います。貝類の砂抜きは海水程度(3%)の塩水で。魚介を洗う・解凍する際にも同じ濃度の塩水を使うと旨味が抜けません。梅干しや干物など、余分な水分を抜いて保存性を高める効果もあります。
活用例
あさりの砂抜き(塩水3%)。オクラの板ずり。梅干し・干物づくり。
|お塩を選べるようになったのは最近のこと
今はさまざまな種類のお塩を手にすることができますが、そうなったのは実はごく最近のことです。
1971年(昭和46年)に塩業近代化臨時措置法の施行により塩の輸入が制限され、イオン交換膜方式で作られた精製塩が主流に。塩化ナトリウムだけを抽出したすっきりとした塩がこの時代に広まりました。その後、1997年(平成9年)に塩専売法が廃止され塩事業法が制定。塩の輸入が再開され、昔ながらの塩田方式も復活して現在に至ります。
私が子どもの頃はちょうど輸入が制限されていた時代で、お塩=しょっぱいもの、という感覚が当たり前でした。当時のレシピを今そのまま再現しようとすると、使うお塩によっては味わいが少し変わってくることもあるかもしれませんね。
|体に優しく、おいしくお塩と付き合う

お料理に欠かせないお塩ですが、摂りすぎると高血圧などの生活習慣病につながる可能性があります。現在の目標値は以下の通りですが、実際の摂取量は10g前後とかなり多いのが現状です。
食塩摂取量の目標値(日本人の食事摂取基準2025年版)
男性
7.5g未満
女性
6.5g未満
実態(推定)
約10g
※「日本人の食事摂取基準」は5年ごとに改定されます。2025年版への更新内容は厚生労働省のウェブサイトでご確認ください
カリウムはナトリウムの排出を促す働きがあります。ほうれん草・バナナ・アボカドなどカリウムを多く含む食材を意識して取り入れることが、上手なお塩との付き合い方につながります。
お塩と一口に言っても、さまざまな種類と個性があります。
次にキッチンに立つときは、いつも使っているお塩を少し味見して、その個性を感じてみてください。
きっと、お料理がもっと楽しくなるはずです。
今回は塩についてのお話でした。
日々のお料理のご参考になりましたらうれしいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!